理系・文系を重ねて見る光景は
六角形の梵鐘 安珍・清姫
1560(永禄3)年創業とされる岐阜市若杉町の鋳造会社「ナベヤ」で4月11日、寺の釣り鐘を鋳造する「梵鐘(ぼんしょう)吹き」が行われた。伊勢市西豊浜町の忍徳寺の注文により、初めて六角形をした鐘に挑戦した。(中日新聞)

前回の円、球に続いて美しい形は六角形です。
雪の結晶、花粉とか自然にあるがままの形はすべてにおいて美しく、そこには必然となるべき原理があるのだろうなあ。
ましてや日本人は「かたち」が好きですからね。
武道などもまず形から入ったりするし、家紋の種類も自然からの模倣だし、さらに人は洗練する。
自らもその原理のなかにおきながら、それを越え、創造しようとするのが人間なのだろうか。
さて、今や梵鐘を作れるところも少ないらしいのだが、岐阜には茶釜を千利休にも納めたというナベヤという由緒正しい鋳物鋳造会社があって、今回初めて六角形をした梵鐘に挑戦した。
このナベヤは鋳物技術の伝承から最先端加工技術まであって、六角形梵鐘というのは伝承技術と最先端加工技術の結晶かもしれない。
しかし、あの遠くまで届く低い鐘の音、六角形ともなるとまるで違いそうで、難しいのだろうなあ。
もともと梵鐘は500~1000キログラム(銅合金)の重さで、全工程が手作業のうえ、この大きさだと他の鋳物とも全然違うらしい。
さらにちがうというのは信仰心が込められるということで、流し込む作業の前には式典・読経が詠まれ、檀家からは指輪やネックレス、金歯なども一緒に混ぜて欲しいといわれることもあるらしい。
僕は梵鐘というと横溝正史の「獄門島」を思い出すけど、「安珍・清姫」などの伝説も、そんな思いも具体的な物質も放り込まれた梵鐘ならむべなるかな。
鐘の音も教会の鐘は鳴らす感じだけど、梵鐘は強く打ち、思いを解放するような音のような気もしますね。

07170335.jpg

数十年前までは年に30個前後製造されたものが、現在2、3個しかないというから梵鐘の技術の伝承も大変です。
でも古来からの伝承技術が日本の最先端技術を支えるものであること示し、自然の模倣に始まる技術、文化はやはり大切だなあ。
エジプトのピラミッドの技術なども失われていることが多く、断絶もまた大いなる革新をもたらすけれど、長く緩い継続も強いらせん(梵鐘に巻きつく蛇・清姫の化身じゃありませんよ)のような?進化力を感じさせます。
御朱印だとか仏像ガールとかがブームらしいけど、梵鐘ガールいうのはいないのかなあ。
文化的にも科学技術的にも梵鐘ってなかなかの偏愛の対象ですよ。
ちなみにナベヤの梵鐘技能保存担当者の持つ資格は銑鉄鋳物鋳造作業特級、1級、銑鉄誘導炉溶解作業1級、機械系保全作業1級、銑鉄キューポラ溶解作業1級。ちょっと見たくなるでしょう?

画像は「へうげもの」。主人公古田織部の師匠にあたるのが、千利休。
スポンサーサイト

テーマ:神社仏閣 - ジャンル:学問・文化・芸術

コメント
この記事へのコメント
温故知新
こんばんは。
ドイツの大学で教えている友人が、昔、ドイツの戦争体験と戦後の教育について話していた時に、ドイツではWWII時のような考え方が出ないように、古典的な知識は教えないことにしたのだ、と説明していたことがあります。
が、今になってヨーロッパの状況を見ると、学校で教えなくとも排他的考え方は出現して国の流れまで変えそうな勢いになっているわけです。暫くドイツの友人たちと話していないので、現在の状況をどう見ているのか詳しくは分かりませんが、昔のことを教えないと云う消極的な姿勢よりも、積極的に昔のことを教えながら、全体を見る目を養うような教育をした方が結果的には平和に近づくのではないか、などと考えています。
今日も本を読まないリーダーが、スティーヴ・バノンが観客席前列に座る前でパリ協定離脱を表明して物議を醸しています。彼の中には「温故知新」は無いようです。。。
2017/06/02(金) 16:48:18 | URL | yokoblueplanet #-[ 編集]
歴史は鑑
こんにちは。
ドイツはゲーテやトーマス・マンのような教養小説、またマイスター制度もあって、日本のように古典や伝統、職人が大切されているようなイメージがあったけど、そうでもないのでしょうか。
「歴史を昔から日本では“鑑”といってきた。それは、鑑を見ることによって現代のあり方を見つめ、ならびに自分の顔のゆがみを直す意味からである」と、半藤一利さんが書いていたけど、日本の鑑も世界の鑑も怪しくなってきた。
2017/06/02(金) 18:42:00 | URL | クプクプ #-[ 編集]
教育制度
おはようございます。
職人の世界にはまだギルド制度が残っていて、伝統がしっかり守られています。(が、全分野に言えるかどうかは不明)知り合いの教授の息子は親の生き方に反発して、大工の世界に入りました。伝統的建造物を扱う日本の宮大工に匹敵する分野で、このギルドに入るには昔ながらの厳しい修行があり、妥協はなく、本当にそこまでやるの?と云うレヴェルでした。
教育では、子供達は10歳か13歳で、職人か学者/弁護士、医師のような専門家の道かに振り分けられてしまうので、大学教育を受けたい職人枠に入れられた若者たちの中には、国外の大学に進む人も多いですね。
ただ、日本人の数学者でマックス・プランク研究所に留学していた知り合いに言わせると、振り分けの基準は父親の職業だ、と言ってました。表向きは、労働者階級の子供達「でも」きちんと教育すれば、医者にでも弁護士にでもなれると、新設大学も80年代前後に幾つか設立されました。これが今、どうなっているか、、、階級制度はかなり根強いですから、追跡調査の結果があれば、見てみたいですね。
「鑑」のお話、同感です。
Critical thinking ができなくなると、「鑑」も曇ってしか見えなくなりますから。
2017/06/03(土) 23:53:21 | URL | yokoblueplanet #-[ 編集]
ドイツのギルド
こんばんは。
僕はいろいろなものに興味は持つけど、基本は書物的な世界に留まるので実際の現場を知る人はすごいなあと思います。
フィールドワークする人があっての知識ですからね。勉強になります。

2017/06/04(日) 00:52:13 | URL | クプクプ #-[ 編集]
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック