見るたびに悪夢にうなされる新藤兼人 監督「鬼婆」
ハロウィン企画らしいのだけどエンターテインメント・ウィークリー誌が、ホラー映画の金字塔とも言うべき「エクソシスト」(73)のウィリアム・フリードキン監督が、「見るたびに悪夢にうなされたような気分になれる」と太鼓判を押したホラー映画13本を紹介している。
このなかでは「ローズマリーの赤ちゃん」がぼくは怖かった。
13本には含まれていないけど新しい作品では「リング」ですかね。あれはやはり怖かった。
そしてW・フリードキンが日本映画で唯一挙げたのが 新藤兼人 監督の「鬼婆」。

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見ていないので調べてみると、たしかに怖いのであった。

時は南北朝時代。戦乱の続く中、息子を戦に取られてしまった老婆と嫁は落武者狩りで生計をたてていた。
そこに息子と一緒に戦場に行っていた男が一人帰ってくる。
息子は戦死し、自分は命からがら逃げ帰ったという。
女のいない戦場から帰った男、旦那のいない生活が続いていた息子の嫁。
男は嫁を誘惑し、嫁も男に身を委ねてしまう。しかし、嫁を取られたら働き手に困る老婆は男に釘をさすのだが、若い男女の燃えたぎる情欲はそう簡単には収まらない。
ある日、般若の面を付けた落武者に出会った老婆は落武者を深い穴に落とし、その面を奪い付けて嫁を待ち伏せし二度と男と会わないように脅したのだが…。
嫁が小屋に戻るとうずくまる鬼がいた。「この面をはがしてくれ!」と哀願する声は、老婆の声だった。
脅された恨みに嫁は男と会うことを許すという条件で、鬼面をはがしにかかった。
しかし、面はぴたりと顔についてビクともせず、老婆は悲鳴を上げる。
木槌をとって面をたたく若い女の手の下を、血が流れていく。
ようやくはがした面の下から、老婆の顔が鬼の顔となって現われた。
嫁は老婆の手を振りきると、狂気のように逃げていった。
とれた!とれた!と喜ぶ老婆は、ひたすら嫁のあとを追うのだった…。

民話から題材をとったものらしいけど、とれた!とれた!と喜ぶ老婆が怖ろしい。
面が取れないのは「デビルマン」だ。
夢野久作「東京人の堕落時代」は、関東大震災後のルポで「昔から大変災のあとに必ず吹き起こることなっている淫風」とあったけど、いやあ、大変災後の人間の欲望・情欲は怖ろしい。
老婆も「わしじゃダメか?捨てたもんじゃないぞよ」などと男を誘惑するのだからね。

W・フリードキンだけじゃなくて、ビョークも見て日本に強い印象もったらしい。
ビョークのアイスランドも金融危機で国家的大変災なのだが、淫風吹き荒れるのか。
老婆も嫁も平和時では、美しい魂の人だったのだろう。

【DVD】鬼婆
キャスト 乙羽信子 吉村実子 佐藤慶 殿山泰司 宇野重吉
定価 4,935円
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