理系・文系を重ねて見る光景は
深読み読書会『孤宿の人』宮部みゆき
文学探偵たちが、“宮部みゆきワールド”を解き明かす! シリーズ深読み読書会がBSプレミアムであって、取り上げられたのが“時代小説の最高峰”ともいわれる宮部みゆきの『孤宿の人』だった。
僕も発刊されたときに思わず単行本で上下巻二冊を買ってしまったのだが、そうか、“時代小説の最高峰”ともいわれていたのか。
読み解くのは鈴木杏,関川夏央,高橋源一郎,倉田真由美,谷津矢車の面々であるけれど、あのTBSドラマ「青い鳥」で駅長さん、駅長さんと言っていた女の子(鈴木杏)がなあ。大人になったものだ。

kosyukunohito.jpg

さて、『孤宿の人』。
江戸の大店の若旦那と奉公人の女の娘として生まれた少女「ほう」は、阿呆の呆と蔑まれ、躾や教育を受けることなく厄介者扱いされ、ついには讃岐の丸海という土地にたった一人で置き去りにされる。丸海藩の藩医を勤める井上家に拾われ、ようやく人並みの幸せな日々を送り始めたのもつかの間、「ほう」に優しくしてくれた井上家の娘が殺されてしまうのだ。
「ほう」は犯人を見たのだが、なぜかしら病死とされてしまう。
真実を口にした「ほう」はあるお屋敷に下女として差し出される。
そのお屋敷こそ、鬼とも呼ばれ怖れられ流罪となり、讃岐の丸海藩に預かりとなった元勘定奉行「加賀様」を幽閉した屋敷であり、預けられるや否や落雷、火災、疫病など怪異に見舞われ、悪霊と怖れられた人なのだ。
「ほう」と「加賀様」は陰謀渦巻くなか、巡り合い、加賀様は「ほう」に手習いを教え始める。
無垢なるものは惹かれあうのだね。この光景が美しい。
そして加賀様は「ほう」新しい名前を与える。お前は阿呆の「ほう」ではなく、進むべき方角を知る「方」なのだと。
孤独な者同士の親子ともいえる絆ですね。
さらに陰謀は大火災、暗闘と続き、死を覚悟した加賀様は最後に「方」の奉公を解いて「方」に屋敷を出ろと厳しく命じます。
やがて、屋敷に雷が落ち、屋敷は炎に包まれ、加賀様を巡る争いは終焉を迎える。
井上家に戻った「方」に、ある日、加賀様の預かり物が届く。それは手習いの見本だった。
見本には「宝」とあった。

鬼だ悪霊だと呼ぶことはそれらを人外のものとし、厄介で扱いにくい相手をむしろ処しやすい、つまり鬼・悪霊などは人の手に余る怖ろしいものだけど、人でなければ相手を理解する必要はなく、命を奪っても心は痛まないということでもあるのだろう。
そして、御霊として祀って守り神にしてしまうのだ。

ちょうど同時間帯枠でやっていたのが日テレドラマ「あのね」で、それぞれに孤を抱え、これまた現代の『孤宿の人』いうべき物語。
「ほう」が阿呆の「ほう」から方角の「方」に、そして最後には宝の「宝」に変わったように、ハズレもハリカに変わって新しい絆を見出し、「孤」を溶かしていく。優しく新しい家族の物語になってほしいなあ。
スポンサーサイト

テーマ:時代小説 - ジャンル:小説・文学

コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック