理系・文系を重ねて見る光景は
地球最初の植物は苔、コケのある風景
コケの魅力をご存じだろうか。一見地味だが、ルーペでのぞいてみると、繊細で美しい世界が広がっている。10年ほど前から観光資源として注目され始め、静かに人気を集めてきた。各地で観察会が開かれ、企画展の集客力は抜群。「苔(こけ)ガール」をターゲットにした宿泊プランを提供するホテルまで登場している。(中略)観察会は愛好家らでつくる「岡山コケの会関西支部」(西宮市)が主催。京阪神をフィールドに月1回ほど開き、毎回10~20人ほどが集まる。参加者は小学生から80代までと幅広い。(中略)コケ好きの間で「三大聖地」の一つとされるのが、青森県の奥入瀬(おいらせ)渓流だ。2012年からネーチャーガイドの会社が中心となりコケのアピールを始め、14年には自然観光資源の調査研究や情報発信などを担うNPO法人を設立。川村祐一事務局長(62)は「渓流の景観で知られる昔ながらの観光地だが、コケ好きに広まり、少しずつ変化してきた」と話す。
地元の奥入瀬渓流ホテルでは13年からコケの世界を満喫できる宿泊プラン「苔ガールステイ」を夏場に提供。観察を楽しむだけでなく、コケを模したベッドカバーやクッションを備えた「苔ルーム」に泊まれ、コケをイメージしたランチプレートやコケアイスもあり、苔ガールの心をがっちりつかむ。担当者は「愛好家だけでなく、宿泊がきっかけでコケの美しさを知る人もいる」。(神戸新聞NEXT)

僕が高校生の頃まで住んでいた実家は古い家屋で堤防の際に建っていたから、子供の頃はよく水害にもさらされたし、堤防は笹が生い茂り、梅や柿、椿、いちじくなどの樹木も多かったから、陽があまり射すことがなかった。
土はいつもひんやりとじめじめしていて、薄暗い石垣には苔やユキノシタが覆い、さまざまな虫が這い回っていて、苔のある日々は虫とともにある日々でもあった。
それでも毛虫はさすがに苦手でイラガ(刺されると相当痛い)のいる柿の木の下はおそるおそる抜けたし、梅の太い幹が動いたかのように見えたのはびっしりと蠢いていた大量の毛虫だと知った時は総毛だった。
誰でもナウシカ姫のように虫を愛でられないし、コケも目を凝らせば必ずしも美しいばかりではない。

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でも、やはりコケは人の魂を揺さぶるのだろう。
こんな詩もあるのだ。

苔について  永瀬清子

まだここには 水と土と雲と霧しかなかった何億年の昔 みわたしてもまだ泳ぐものも這うものも見当たらなかったおどろの時
濛濛の水蒸気がすこし晴れたばかりのしののめに お前は陽と湿り気の中からかすかに生まれたのです
なぜと云って 地球がみどりの着物をとても着たがっていたから いまでも私たちの傍らにどこでも見られる苔よ…

詩人だけではない。そして地球だけでもない。
1957年の学研学習年鑑理科篇の火星の紹介にもこうあったのだ。
1956年の9月には32年ぶりに大接近した火星の表面は赤みがかったオレンジ色で、南極と北極には白く輝くところがあり、これは極冠といい、冬になるとできる氷の原だと思われます。火星が春になるとこの氷がだんだん小さくなり、そのかわり、赤道近くが緑色になってきます。ちょうど、氷が解けて川の回りに植物がはえているようなありさまです。ちかごろ、大望遠鏡で調べたところ、この緑色は、コケのような植物であることがわかりました…。
とあって、執筆は東京天文台 富田弘一郎。
詩人の想像力にも勝りますね。火星にもまたみどりの着物をとても着せたかったのだろう。
科学がまだロマンチックな時代。
さて、話題の苔ガールの嚆矢は誰か。
映画「マタンゴ」の水野久美(西郷どんのおばあ様ですね)かとも思ったけど、あれはキノコであって苔ではなかった。
でもドキドキするような妖しいお姉さんだったなあ。
ドラマ「フランケンシュタインの恋」の二階堂ふみもキンジョ(菌女)のキノコガールで、さらに「ウチの夫は仕事ができない」のサーヤこと松岡茉優は夫から森の妖精とも呼ばれていたけど、夫の趣味は粘菌だった。南方熊楠先生か。
となれば、やはり映画「吸血鬼ゴケミドロ」ですかね。もともとは「コケミドロ」だったらしいからなあ。
まだここには 水と土と雲と霧しかなかった何億年の昔 みわたしてもまだ泳ぐものも這うものも見当たらなかったおどろの時
濛濛の水蒸気がすこし晴れたばかりのしののめに お前は陽と湿り気の中からかすかに生まれたのです…
コケミドロの誕生譚でもおかしくないでしょう?
まあ、苔ガールとはなんの関係ありませんが。
苔が見(魅)せる小宇宙はSFのような想像力に誘い、また小説「ひかりごけ」(武田泰淳)のような狂気と幻想にも誘います。
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テーマ:散策・自然観察 - ジャンル:趣味・実用

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