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理系・文系を重ねて見る光景は
「精霊の守り人」で文化人類学を学ぶ
映画「スター・ウォーズ」も大ヒットしているらしいけど、日本発の大ファンタジーをドラマ化したNHK「精霊の守り人」も佳境を迎えている。
第5話の「槍(やり)舞い」などは凄絶な戦いが美しいまでに描かれ、人の闇の深さ、切なさなど、やはり光と闇は表裏一体なのだという、ファンタジーの王道を残酷に、そして優しくも伝えてくれます。
「スター・ウォーズ」はスペースファンタジーで外的宇宙、「ハリー・ポッター」は魔法的宇宙で同じく光と闇の戦いだけど、「精霊の守り人」は戦う相手が失われし先祖であったり、その思いだったり、より内的宇宙の物語。
原作の上橋菜穂子は文化人類学者だから、さまざまな知見をすみずみまで散りばめてこの物語は作られているのだろう。

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たとえば南米のアステカ文明が滅びたのはコミュニケーションのちがいと指摘したのはブルガリアの思想家ツヴェタン・トドロフで、精神世界におけるコミュニケーション、すなわち、神や死者、先祖というものとのコミュニケーションの捉え方だとし、つまり、アステカは神とのコミュニケーションを優先し、人同士のそれを優先したスペインに負けたというのだが、同時にスペインはその時点で大敗したともいう。他者がはたしてほんとうに敵なのかという信託を神に問い、戦いを躊躇したというアステカと、躊躇うことなく殺戮に徹したスペインを対比したとき、人類史と長い目で見れば、コミュニケーションの生産性という観点からして実質的に勝ったのはアステカだという。(中日新聞 山本伸 四日市大学教授 カリブ文学)

アステカは滅びたけど、長い人類史でいわば光の勝者と記憶されるのはアステカの戦いというのだが、まさにこんなことも思わせるような「精霊の守り人」です。
日常でも人間は思わぬ危機に巡り合えば絶句したり、立ちすくんだりする。最近はそんな様子でも見せれば、あっという間にその隙をつくような、AI的?即物的な、身も蓋もない判断・行動が増えてきているような気がします。
絶句したり、立ちすくんだりするのはなにも信託を神に問いかけているわけではなく?、緊急避難的な一時的な思考停止であり、正確な判断をするための手順の一行程でもあると思うけど、そんな状況にも容赦なく突っ込んでくるような時代。
今の経済や国家間の問題にも当てはまりそうで、スピードなのか逡巡なのか…、日本も常に自然の脅威と隣り合わせだったから、いささか神託、滅びの美学に通じるようなものを感じるけど、決して敗者の負け惜しみというものでもないのだろう。
悠久なる宇宙の、地球の、生命の、人類の歴史…、名を残すものはなんだろう?
まあ、名を残して何になる、今が大切なのだということもあるのだろうけど。

ツヴェタン・トドロフによれば、人間のコミュニケーションを構成する三つの層、①上から順に人同士の「見える、聞こえるコミュニケーション」、②自然との「見えるが聞こえない」コミュニケーション、そして③神や死者との「見えない、聞こえない」コミュニケーションがあり、 このうちの下二層こそが大切なのだと。
SNSは人同士の「見える、聞こえるコミュニケーション」を果てなく拡大し、これも大切ではあるけど、下二層のコミュニケーションを奪い取ってはいないだろうか。「星の王子様」ではないけれど、やはり大切なものは目に見えない。

今年最後のブログです。それでは、よいお年を。
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コメント
この記事へのコメント
上橋菜穂子
おはようございます。
映像化を長らく断ってきた上橋さんですが、今回初のTVドラマ化はいかがですか?
原作は読み出すと止められないくらいに面白いですが。。。
お元気に佳い新年をお迎えください!
2017/12/29(金) 21:48:47 | URL | yokoblueplanet #-[ 編集]
精霊の守り人
こんばんは。

> 映像化を長らく断ってきた上橋さんですが、今回初のTVドラマ化はいかがですか?

NHKが長い制作期間をかけた大河ファンタジーに相応しい出来で、僕は大満足なのですが視聴率が伸びないのが残念です。
NHKには視聴率に関わらず、意欲的なものに挑戦し続けてもらいたいものです。
よいお年をお迎えください。
2017/12/29(金) 23:11:12 | URL | クプクプ #-[ 編集]
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