理系・文系を重ねて見る光景は
過労自殺の向こうにあるもの
新国立競技場の建設作業員が過労自殺した問題で、別の元作業員が、現場で予定変更が相次ぎ作業員に負担がかかっていると証言した。この問題は新国立競技場の建設現場の23歳の男性作業員が過重労働が原因で自殺したとして、遺族が労災を申請したもの。別の作業員の男性は日本テレビの取材に、新国立競技場の設計変更の影響で工期に余裕がなく、特に負担がかかっていると証言した。(日本テレビ)

もう旧聞となるニュースだけど、今日の報道によれば新宿労働基準監督署が男性作業員の死を労災と認め、これは労災の認定としては異例の速さだという。
電通の過労死事件が大問題になったこともあるのだろう。当時の塩崎恭久厚生労働相はすぐにも現場で他にも過重労働の実態がないか調査を始めたとし、また、その後の証言ではさらに上司のずいぶんなパワハラ発言もあったという。
もちろん、これは論外なわけだけど、基本的に東京オリンピックが2020年に決定していて、予算云々のまたこれも座視できない問題ではあるにしろ、初めから設計のやり直しなどスケジュールを極めて窮屈なことにしてしまった責任はどこにあるのだろうか。
オリンピックの期日は決まっており、それらの紆余曲折の最後のつけは結局現場に来るのだ。
間に合う前提であっても何が起きるかわからず、ましてや動かせない期日のあるものであればなおさら余裕をもってすべきと思うし、やむを得ない事情でそうなったのならば、ハードスケジュールからのリスクも予想され、あらかじめ配慮があってもよかったと思うけど、いつも事故・事件が起こってから。
これこそ、まさに「事件は会議室で起きてるんじゃない!現場で起きてるんだ!」。

さて、関ケ原での古戦場サミットに「反戦運動家は何をしておる!」 と思わぬ異議を唱えた呉智英。
岐阜県と同県関ケ原町とが関ケ原古戦場を世界三大古戦場の一つとし、あとワーテルローとゲティスバーグの二都市を招いて古戦場サミットを開き、「歴史の授業で有名なわりに観光にいかせていない」と「歯がゆさがあった」とし、「世界3大の名乗りは気宇壮大」と朝日新聞「天声人語」が声援を送ったというのだ。
私はこの「天声人語」が掲載されるや、朝日新聞と岐阜県・関ケ原町に全国から抗議の声が殺到するのではないか、と思っていたが、今に至るまでその気配はない。 全国の反戦運動家の諸君は、何をやっておるのか。明々白々の戦争礼讃、しかも背後には観光資本の貪欲な営利追求主義もある…と例の皮肉な批判が続きます。
ワーテルローはナポレオンの野望を打ち砕く抵抗戦争と言えば言えなくもないし、ゲティスバーグは黒人解放戦争の始まりと言えば言えなくもない。 すべての戦争は悪である、正義の戦争などない、という絶対平和思想がある。
私はこの思想にそれなりの意義は認めるものの、賛成することはできない。抵抗戦争、解放戦争は、やはり支持したい。
しかし、関ケ原の戦いは抵抗戦争でも解放戦争でもない。諸侯の領土拡張戦争ではないか。

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うむむ、例によってひねくれてはいるものの見事な論理展開。
こんな凄惨な戦争を無批判に賞讃し、あまつさえ観光資源にして金儲けをしようという計画を許していいのだろうか。
1945年3月26日から6月23日まで、沖縄では壮絶な戦闘が続いた。同年8月6日、広島に原爆が投下され、同月9日、長崎にも原爆が投下された。 これを「歴史の授業で有名なわりに観光にいかせていない」と「歯がゆく」思う人がいるだろうか。
沖縄の戦跡で「沖縄戦祭り」が開かれ、子供たちに軍装させて行進させるだろうか。
広島・長崎で模擬原爆投下のパフォーマンスが行なわれ、観光客が歓声を挙げるだろうか。
いや、ほんの七十年前の戦争と四百年も前の戦争とでは、わけがちがう、という声もあるだろう。
それなら、戦争から何年経ったら、そういうお祭り騒ぎだの観光資源化だのも許されるのだろうか。

戦争体験の風化が進み、沖縄戦や原爆の惨劇さえ忘却されようとしている。風化忘却を嘆く声は強く、私もそれに共感する。
しかし、風化忘却の勢いは抗しがたい。関ケ原観光資源化がその証明である。
「天声人語」はこう結ばれている。「歴史の面白さを知る糸口として格好のテーマだろう」。私は「歴史の面白さ」ではなく「歴史の悲情さ」だと思う。

先の過労自殺といい、目先や、センセーショナルものばかりに目を奪われていると、もう一方の真実を見失っているのかもしれない。この二つを関連付けようとはちょっと強引だったか。
ほとんど呉智英さんの引用で終わってしまった。
画像は「関ヶ原合戦図屏風立版古」。
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テーマ:社会ニュース - ジャンル:ニュース

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