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理系・文系を重ねて見る光景は
注意書きが必要な「少女幻想」
「偏愛蔵書室」(諏訪哲史)には書名の通り、数々の偏愛に満ちた文学書などが取り上げられているのだけど、やっぱり、偏愛となれば渋沢龍彦、種村季弘だよなあ。
僕は系統的にきちんと読んだわけではないけど、文学好きのマイノリティなら少なからず通る道でしょう。
たとえば「少女コレクション序説」 (中公文庫 澁澤龍彦/著)。
諏訪哲史によれば澁澤の著作に通底するのは、取りも直さず、冷たい「物体」への愛であり、それは時に「玩具」「人形」「少女」「屍体」などと言い換えられる。つまり静物、あくまで受動的な、「客体」への愛。本稿に従えば、「少女」は実は男の観念が発明したものである。それは少女が、「社会的にも性的にも無知であり、無垢であり、小鳥や犬のように主体的には語り出さない純粋客体、玩弄的な存在」だからである。
だが少女たちは決して死んでいるのではなく「眠っている」のだという。

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ノーベル文学賞を受賞した川端康成の「眠れる美女」「片腕」などの幻想譚も同様ですね。
まあ、文学の表象を借りなければ病的と断じられる危険性を持ち、たしかに人間は美徳や良心ばかりで成り立っているはずもなく、澁澤の国に足を踏み入れることが許される高貴な読者とは、「例えば本書表紙の四谷シモンの人形に不可思議な魅力を感じ取れるような人々のことである。人形を愛する者と人形とは同一なのであり、人形愛の情熱は自己愛だったのである」(諏訪哲史)
うむむ、あまりワクワクと幻想譚を読みふけるのもいかんのだな。最後にはしっかりと注意書きも記されている。
幾多の奇想に溢れた澁澤国に入国の際には、そのまま亡命とならぬよう十分な注意が必要であると。

少し前にも「少女アイドルに熱中する日本 『崇拝』か『小児性愛』か」というのがヤフーニュースであって、やはり外国人には異様に映るらしく、「源氏物語」から連綿と続く日本文学の独自性もあってと言ってもなあ。
またアイドル自身もライブに来る男性たちはアイドルを崇拝し、普段はとることのできない若い女の子たちとのコミュニケーションを切望しているだけの純粋なファンが大半だといい、やや日本伝統の「少女・アイドル」幻想からの進化というか逸脱なのかよくわからないけど、その勢いはやがて日本全体の幻想、世界すら覆うかもしれない。
しかし、澁澤の国に足を踏み入れることが許される高貴な読者、あるいは幾多の奇想に溢れた澁澤国に入国の際にはそのまま亡命とならぬよう十分な注意が必要であると注意書きがなされたように野放図に入り込んでもいけないのだろう。
と、ここまではおそらく男からの純粋少女幻想論。

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その視線に中にある少女はどうか。
男たちの幻想に埋没したり、見事に乗りこなしたりしてるようで、やはり、ともに幻想は合一し、スパイラルのように立ち昇っているのかもしれない。
夢見がちで空想癖があり、白馬の王子様を待っている…、そんな女性たちの症状を「少女病」と名付けたのが吉川トリコ。
少女マンガを読んで育ってきた女の子たちは大人になって愕然とする。幼い頃から少女マンガを読み、いつかこんな恋愛をしてみたいと胸をときめかしていたのに、現実の男性は少女マンガに出てくる男の子のようにかっこよくもないし、甘いことも言ってくれない。ピンチの時に助けにきてくれない。強引に唇を奪ってくれもしない。雨の中、泣きながら飛び出していくヒロイン(私)を「待てよ!」と追いかけてきてもくれない。
それは絶望といってもいい。子供の頃から憧れていたものが永遠に手に入らないと知ってしまったのだから。
かといって、いつまでも打ちひしがれてるわけにもいかないから、タフな女の子たちは現実に折り合いをつけて進んでいく。
実際、私のまわりには恋人や旦那がいるのに少女マンガから抜け出せなかったり、ハーレクインを読みあさったり、乙女ゲームに夢中になっていたりする女性がたくさんいる。彼女たちが求めているのはときめきだ。少女のころ、幾度となく胸をしぼった、あの甘酸っぱい感情。
あるいはいつだったか松永美穂 早稲田大学文学学術院教授(ドイツ文学)が新聞に載せていた「なりきり小公女』。いろいろな小説・ドラマを読んでも見てもドラマチックなヒロインにはなれなかった松永さんが、のめり込んだのは「小公女セーラ」だった。
屋根裏部屋というものがよくわからなかったので、家の裏にある三畳くらいの物置で自分が寝起きする姿に置き換えて、健気に生きる主人公を演じていたという。
やはり男女ともに少女幻想は合一し、スパイラルのように立ち昇って、いずれ世界を席巻するような気もするけど、亡命にならぬようにその世界に踏み入れるための注意書きはきちんと守られるだろうか。
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テーマ:詩・ことば - ジャンル:小説・文学

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